『小説は電車で読もう』

植草甚一

晶文社

1979年12月発売


世の中にある全ての本を読むことはできない。半ば絶望しながらチビチビ本を読んでいたら…いた。買ったばかりの雑誌のページを引きちぎり、それをホチキスでとめ、尋常ではないスピードで片っ端からやっつけている人間が。ブルータスなんかでその存在を知っていた評論家「J・J」こと、植草甚一さんの書評本。古本屋で買ったのは間違いないけど、すこぶる状態がいい。アマゾンで価格を見たら一万円になってました。

 

ひたすら読んではひたすらアウトプット。今まで蓄積してきた膨大な読書のストックや自身の体験を巧みに引っ張りだしながら、新たに読んだ小説を手当たり次第に血となり肉としているのが、圧倒されたと同時に、ひとつでも多くの作品に触れなきゃという焦燥感に強烈に駆られた。こちらが消化不良を起こしてしまうほど、面白そうな小説の断片が、まくしたてられるように現れては疾風のように消えていく。どんどんストレスもたまっていく一冊。これらの小説なんて、他ではどこにも紹介されていない。ここから枝葉を広げていくためにも。当分この本は手放すつもりはありません。