『あなたを選んでくれるもの』

ミランダ・ジュライ

新潮社

2015年8月発売


誰の選書かは秘密。あの人の本箱。神奈川「箱根本箱」に泊まったときの部屋の中に置いてあった一冊。切り抜かれた虎の写真。何冊か買った本の中でも一番内容が想像できなかったので、一番最後に後回しにしていた。映画監督ミランダ・ジュライの創作に行き詰まった成れの果て。フリーぺーパーに売買広告を出す人に買う気もないのに突然電話をかけ、実際に会って話を聞くというもの。ちなみに本書と並行して「ザ・フューチャー」という映画を制作しています。

 

事実は映画よりも奇なり。60代後半になって性転換を始めたという男性、ウシガエルのオタマジャクシを売る高校生、足首に何かついている会社社長だと言う男。一人一人の写真も撮ってある。作り話じゃない。こんな人たちが全編に渡って登場してくる。書いてるほうもどうしていいのか分からないみたいだし、読んでるほうだってどうしていいか分からない。どう結末に持っていくのか心配して読んでいたら、どうにかこうにか最後にケリがついた。映画を観終わってから再読してみると、手に取るように輪郭が浮かび上がる。ちなみに映画はミランダ・ジュライ本人が主役を務めています。どちらを先に選ぶかはあなた次第。

 

 

『本の街あるき NO. 125』