コロナブックス編集部
平凡社
2015年6月発売
本の面白さは変わらなくても、足を使った時のほうが、記憶が遥かに頭に染み込んでいる。ずっと欲しかったので、本屋に実際に置いてあるのを見た時は、思わず声が出そうになるほど嬉しかった。数年前に「FUTABA+」神戸マルイ店で購入。しばらくして、閉店の知らせを聞いた時はなんとも言えない気持ちになった。残念なのは変わらないんだけど、さらに本に特別な感情が芽生えたのも事実。スラスラ当時の思い出がよみがえってくるのがその証拠。デジタルにはない、不思議なチカラ。
「あの時代、コーヒーはそういうチカラ──都市伝説とか迷信のようなものを持っていた」。サードウェーブもシングルオリジンも、スタバすらも存在していない。そんな時代を生きた、作家の珈琲の風景を綺麗に切り取った一冊。文章も写真も、愛用していた道具も親しくしていた人たちも、通っていた店すらみんな残っている。でも、そこに座っていた作家だけがいない。正しい知識や科学によって、コーヒーは昔より確実に旨くなっている。でも、科学や知識だけでは解き明かせない匂いが本の中には充満している。わからないままでいい。その香りがあることがわかっただけで満足です。
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