『南仏プロヴァンスの12か月』

ピーター・メイル

河出書房新社

1996年4月発売


テレビの画面に映る花いっぱいの庭を綺麗だと思ったり、「世界ふれあい街歩き」のような番組を心から楽しむようになったり。ただただ刺激だけを追い求めている20代では、この素晴らしさに気付くことなど到底できなかった。どこで買ったのかを思い出せないけど古本屋で買ったのはたぶん間違いない。実家で見かけて本気で読みたいと思ってとうとう読破。

 

「アスパラガスの若い芽は半透明の薄色で、私たちはこれを茹でて、熱く溶かしたバターで食べた。パンはその日の午後、リュミエールの老舗のパン屋から焼きたてを買ってきた。ワインは地物の甘口の赤である」。世界中の人々がこれを読んで、近所のスーパーにアスパラガスとパンとワインを買いに走ったのは想像に難しくない。世界中で100万部売れているという本書。イギリスでコピーライターをしていた著者が南仏へ移住、その魅力を綴ったエッセイ。出版後にプロヴァンスブームが巻き起こったというのにも納得。でもブームが起きたのは綺麗どころを切り取ったからだけじゃないと思う。辛辣だけどウィットに満ち満ちた、著者が見た実際の風景も大きい。令和になっても本の魅力は変わらずに伝わってきた。