東海林さだお
文藝春秋
1993年9月発売
「どんな山奥の旅館でも出るというマグロの刺身がない」。インプットはみんなしてる。でもそれを時間が経っても忘れずに覚えておいて、きちんと後でアウトプットできてる人はそうはいない。これがお金をもらえる仕事というやつか。それを改めて見せつけられた一冊です。
このユーズド具合で一目で思い出せる。数年前に香川の「なタ書」で購入。古書についていた匂いが、何もしなくても自然に消えるくらい。それくらい長い間、自分の部屋で寝かせてしまっていた。お名前や著書はたくさん存じ上げているけど、実際に読んでみたのは初めて。さらっとした爽快な読後感、一度も引っかかることなくスラスラ読めてしまう、まるで空気のような軽やかなテンポ。「日本におけるユーモアエッセイの一人横綱的存在」。本を読み終わる頃に東海林さんのことを少し調べたりしたけど、そう言われている理由がはっきりわかった気がした。一億総エッセイスト社会に日本がなっているにしても、その技術とセンスは飛び抜けている。ど真面目に書いたけど、本当に気楽な内容。何でもない話。何でもない話にお金を払う価値が付いてる。やはりこれが真のプロの仕事。シビれた。