『ライスシャワー物語』

柴田哲孝

祥伝社

1998年4月発売


日経賞、天皇賞、そして宝塚記念…テレビの前とはいえ、リアルタイムでこの馬が走る姿を見れたことをとても幸せに思います。あれから20年。強い馬は沢山いる。感動したレースもいっぱいある。だけど、どうもライスシャワーのような馬はいなくなったような気がしている。本は岡山で均一ワゴンの中から発見、購入。

 

「メジロマックイーンもミホノブルボンも喜んでいることでしょう」。天皇賞での杉本清さんの実況。今振り返れば妄想、私情をはさみ過ぎとも言えなくもない。でも当時この実況を聞いた時、15歳の自分は目頭が急激に熱くなるのを止められなかった。「関東の刺客」の異名、そして悪役からヒーローへ。ライスシャワーの生涯をまとめた一冊。今なら、ネットで競走成績もレース映像も容易に見ることができる。素晴らしいことだと思う。それに加えて一冊濃密に、ライスシャワー自身はもちろん、この馬に携わった関係者の人間模様を垣間見るのも、とても有意義なことだと思う。本には作者の意図した感動も散りばめられてはいる。それでも人間の意図など遥かに超えた感動がこの一冊には詰まっています。

 

 

『本の街あるき NO. 12』